従業員のメンタルヘルス 〜EAPの重要性〜

こんにちは(°∇° )

突然ですがみなさん、ご自身のメンタルヘルス、気にしてますか?社会構造が複雑になるにつれてうつ病の罹患も増え、大きなファクターである仕事や職場に注目が集まっています。

一般企業ではストレスチェックが義務化(詳しくは厚生労働省の資料を見てみてください)され、様々な取り組みが行われているのを耳にします。

知り合いにも産業保健に携わったことがある看護職がいていろいろ話を聞きますが、ふと、医療施設に産業保健師がいるという情報を聞いたことがないな…と思いました。

そこで今回は、ストレスの基礎と新しいメンタルヘルス専門職であるEAPについて書いていこうと思います。

ちょっと長いですが、よろしかったら見てってください!



ストレスが発生する概念モデル

NIOSH(National Institute for Occupational Safety and Health:米国立労働安全衛生研究所)が発表しているストレスモデルでは、職場でのストレッサー(ストレス要因)に個人の特徴やそのほかの要因が加わることによりストレス反応が出現します。

職場のストレス要因

仕事のストレス要因には、大きく分けて量的負担質的負担があげられます。

量的負担は、いわゆる「仕事が多すぎるよ〜!!」という状態で、慢性的な残業や仕事とマンパワーの不均衡で表されたりします。

質的負担は、医療職のようにヒューマンサービスであれば対人的仕事による負担や、「え、そんなことも僕の立場でやらなきゃいけないの?」「この仕事は誰の役割で誰の責任なの?」というような、役割や職務の曖昧さが質的負担となります。また、職務を遂行する上で権限が与えられていなかったり、ということも質的負担につながります。

NIOSHストレスモデルではこのほかに、仕事や職場の将来不安(この仕事は安定して続けられるのか?)、交代制勤務(夜勤などを含む勤務形態)も職場のストレス要因としてあげられています。

ちなみにこれらの要因は看護師におけるストレッサー(ストレス要因)の研究結果と同様です。

それ以外の要因

個人要因では、年齢や性格等が挙げられています。

一般的に、年齢の低い人はストレッサーに対処する資源が年齢の高い人に比べて少ないので、ストレス反応が出現しやすいと言われています。

性格傾向では、いわゆるタイプAと呼ばれる性格傾向をもつ人は、よりストレス状態に陥りやすいことが言われています。

ほかにも、自己評価の低い人、つまり自己効力感の低い人はよりストレスを感じやすいと言われています。

仕事以外の要因として、家族からの要求、つまり家庭役割による要因について言及されています。ワーク・ファミリー・コンフリクトという概念でも表現され、仕事と家庭の役割葛藤によってストレス状態へ移行することも明らかになっています。(ワークライフバランスやワーク・ファミリー・コンフリクトについては改めて記事を書く予定です)

ほかに、ストレス状態への移行を緩衝する要因として、社会的支援(ソーシャルサポート)があげられています。上司、同僚、家族のサポートが書かれていますが、これらはどれかひとつだけでもダメで、それぞれがバランスよく存在することによって効果的にストレスを緩衝することができます。



ストレス反応

ストレス反応として、心理的反応生理的反応行動化の3つがあげられています。

心理的反応や生理的反応は、体がストレッサーから身を守るために現れる反応ですので、もしこういった反応が現れた際には、決して無理をせず、仕事を休み医療機関を受診するなどの早期対処が必要となります。

無理をしてそのまま改善せずに仕事を続けてしまうと、心身の疾患(うつ病や心疾患等)を罹患してしまう可能性があり危険です。

職場ストレスの救世主、EAP

EAPは、日本ではまだまだマイナーな職種かもしれません。

従来、ストレスカウンセリングをする職種は、心理学の専門家である臨床心理士が一般的でした。しかし、臨床心理士になるためには、心理学修士課程を修了する必要があり、数があまり多くありません。

そのため、日本の臨床心理士の多くは医療機関や教育現場にいるため、現在需要を増している企業にマンパワーが回っていないのが現状です。

企業のメンタルケアは現在、産業医や産業保健師が担当していますが、産業医の約5%しかメンタルを専門としておらず、産業保健師もまたメンタルの専門家ではありません。

そこで注目されるのがEAP(Employee Assistance program)です。

アメリカでは、トップ企業の90%がEAPを導入しており、多くの医療機関でもまた、医療従事者を対象としたEAPを導入しています。

EAPを導入した企業では、従業員の事故やミス、欠勤などによる労働損失が減少したり、職場環境が改善し生産性が向上したりと効果がみられています。

企業においてEAPを主導する専門職、それがEAPメンタルヘルスカウンセラーなのです。

EAPメンタルヘルスカウンセラーって?

メンタルが不調で仕事のパフォーマンスが低下している人たちに対し、カウンセリングによる心理療法を主に行います。

ただ、これまでのカウンセラーと異なる点として、個人対個人のカウンセリングによる改善だけではなく、相談者の代わりにしかるべき部署等に意見を代弁したり、所属部署に対し具体的なアドバイスや提言を行ったりします。

また、メンタルの不調を抱える人の周囲の人(同僚や上司)の相談にも対応したりします。

これまでのメンタルヘルスカウンセリングは、主に個人対個人のカウンセリングで、「個人がどのように今の状況や環境に対処するか」という視点でのみ行われてきました。

しかし、職場のストレッサーには、時に個人の対処能力だけでは対処不可能で、所属部署や組織を巻き込んで考える必要があり、EAPカウンセラーはそういった視点でもメンタルヘルスを考えていく職種なのです。



いかがでしたでしょうか?医療従事者は、バーンアウトに代表されるように、とりわけストレス状態に陥りやすい職種であるにもかかわらず、日本の多くの医療機関ではメンタルヘルス対策が十分であるとは言い難い状況です。

企業や職場の特徴を理解したうえで、組織を巻き込んでメンタルヘルス対策をしてくれるEAPカウンセラーが、今後もっと医療機関で活躍してくれることで、看護職の離職にも良い効果が現れるのではないかな、と思っています。


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