看護系大学院進学や大学院生活に関するQ&A 5選:博士研究者が答えます

新年度が始まりましたが、世間では未だに新型コロナウイルス感染症が燻っている状況ですね。

昨年度大学では、看護基礎教育に関し、対面講義を基本としつつ、その時々の感染症拡大の状況に柔軟に対応することが求められましたが、今年度も同じような1年になりそうな今日このごろです。

さて、今回の記事では、今年度新たに大学院生となった方、来年度以降近い将来大学院進学を考える方に向けて、進学したての大学院生や進学希望者から寄せられる質問・疑問に対し、博士課程修了者、研究者としての立場で回答していこうと思います。看護系大学院の他、福祉系や心理系でも参考になるかな、と思います。少しでも参考になれば幸いです。

Q1:どのように進学先の大学院を決めればよいのかわかりません。とりあえずレベルの高い大学院を選択すべきでしょうか?

A:以前の記事でも書いていますが、大学院とは研究をする場所で、基本的には「大学院を受験する」というより「研究室を受験する」という意識が大切です(試験が研究室単位で実施される、ということではないので注意)。
「レベルの高い」ということがどのようなことを指しているのかわかりかねますが、いわゆるトップ校であっても、自分がやってみたい研究テーマと、指導教員・研究室の研究テーマが一致していない、行っていないということもよくあります。
そうした場合、たとえ指導教員が受け入れを許可したとしても、効果的な指導を受けられない可能性があるということを理解した上で受験を検討しましょう。個人的には自分の研究テーマと親和性のある指導教員・研究室を第一候補とするのが望ましいと感じています。

ただ、受験時点で研究テーマが決まっていない、という方も少なくないでしょう(この点については後述します)。
トップ校では、指導教員の実績もさることながら、大学院生の学習・研究活動を支援する仕組みが専攻内外に様々用意されていることも多いです。海外の大学院生や他分野の若手研究者との交流機会、日本をリードする研究者の講義やセミナー、能力の高い学生を経済的に支援する仕組みなどです。
また、研究室の構成員も参考になります。同一職種(僕たちであれば看護職)が大多数なのか、多職種が入り交じる構成なのか、といった点も参考になるでしょう。
特にテーマが固まっていない方は、自分がその場に身を置いて知的好奇心をかきたてられる、成長できそう!と感じる研究室を選択することをおすすめします。

 

Q2:研究テーマが決まっていません。テーマが決まっていなくても受験して良いのでしょうか?

A:これもよくある質問ですが、正直に申し上げると、この点は指導教員の裁量ですので一概に良い悪いを判断できません。
もちろんテーマが決まっている方が良い場合がほとんどですが、研究室によっては、修士課程では研究室のプロジェクトの一部を行ってもらうところもありますし、テーマがある程度決まっていないと指導教員が積極的に許可しないというところもあります。指導教員・研究室によりけりです

また、現実的なことを申し上げると、入学前に受験希望者が「こんなテーマで研究がしたい!」とおっしゃるテーマは、具体的であればあるほどすでにどこかで研究されていて、改めて実施する価値があまり高くないというケースや、研究として成り立たないというケースも少なくありません
(→テーマを考えるときは自身のクリニカルクエスチョン(臨床疑問)と、手に入る範囲で文献レビューをしてみると良いでしょう)
進学したい研究室の指導教員と事前に面談し、どの程度テーマを固めておく必要があるのか確認した上で考えてみると良いと思います。

個人的には、少し漠然としたテーマは持っておくと良いと思います。例えば…

  • 自宅介護者の介護負担感が被介護者の健康状態にどのような影響を与えるだろうか?
  • 看護職員の配偶者の支援が交代制勤務継続意思にどのように影響するだろうか?

などです(研究用語では「クリニカルクエスチョン、臨床疑問」といいます)。
指導教員との面談では、ザックリとでも良いので「こんな研究をしてみたい!」という熱意を伝えてみると良いでしょう(臨床への愚痴にならないよう要注意!)。基本的に指導教員は、学力や能力以上に意欲のある学生を歓迎します。

 

Q3:研究にセンスはありますか?研究に向いている/向いていないなどはありますか?

A:個人的に感じるのは、研究そのものにはセンスはあまり関係ないと感じます。ただ、全く関係ないかというと微妙です。研究活動をそれなりにスムーズに進められるためのキーワードは「概念化」と「言語化」です

研究とはザックリいうと個別の事象から一般化をめざす営みです。そこで重要になるのが「概念化」です。自分や他者の経験から研究疑問を抽出する、研究疑問から研究目的を設定する、結果を解釈して考察するなど、さまざまなプロセスで「概念化」のスキルが必要になります。

この「概念化」プロセスで、自分の経験や特定の事象にこだわってしまったり(客観性を欠いている)、研究者間のディスカッションから研究の肝となる要素を抽出できなかったり(文脈からポイントを抽出できない)すると研究をすすめることが難しくなります。

また、一般化された概念を他者に伝えることも研究活動の重要な営みです(わかりやすい例は学会発表や論文執筆)。最終的な結果公表だけでなく、ゼミなどで研究についてディスカッションする際も、自分の考えや現在の取り組み内容(立ち位置)、学術領域における自分の研究の位置づけなどをわかりやすく他者に伝えることが必要になります。
こうした一連のプロセスにおいて重要になるのが「言語化」のスキルです。「言語化」がうまくできていない方は一般的に自身の頭の中も整理されていないことが多いので、言語化できない=頭の中が整理されていないので、研究をすすめることが難しくなります。

こうした要素はあくまで「スキル」ですので、センスというよりは伸ばすことができる能力だと思っています。講義やゼミを受けるとき、日常の出来事を捉えるときなどに「概念化」「言語化」を意識することで身につけられるでしょう。

 

Q4:研究者になる予定はありませんが、大学院に進学したいと思っています。このような考えで進学しても良いでしょうか?

A:大学院では研究をしなければならない、という前提のもとでお答えすると、たとえ研究者にならない場合でも進学して得られるものは大きいと思います。ただしその場合は「何を身に着けて修了するのか」を意識しておく必要があります

大学院は学部と違い、「何かを教えてもらう」という受動的な場所ではありません。課せられたことを課せられたまましていると、あまり得られるものは多くありません(研究者志向の方も同様です)。臨床に戻って活躍したい、というキャリアを考えている方は、科学的思考」と「言語化力を習得する意識で学んで頂くことをおすすめします。

「科学的思考」は、できる限り客観的に事象を捉え、妥当なことを探索すること(正解を探索する、ではありません)ですので、臨床でもきっと役立つ能力でしょう。また、自分の関心領域では科学的にどのような概念が生成・発達しているのか、を知ることも重要ですし、「研究とは何か」を知ることで学術論文から得られる情報も量・質ともに変わってくるでしょう。

さらに「言語化力」は、単に言葉にするということだけでなく、データで示すことなども含みます。抽象的な個別の事例をデータで示すことで、事例の蓄積や結果の示し方、そこからどのように何をエッセンスとして抽出するか、ということに繋がります。

研究者を目指さなくても、このようなことを意識して取り組めばきっと得られるものは大きいと思います。

 

Q5:ゼミで先輩たちが言っていることが理解できません。普通なのでしょうか?

A:入学したてでは普通です。僕もそうでした。ただ、わからないこと、自分の関心から外れていることを放置していてはそのまま退屈な時間になります。
わからないことが出てきたらすかさずメモを取り、あとから自分で調べたり、同期と勉強会を開催して理解を目指す取り組みが重要です。大学院では、講義やゼミから得られること以上に、こうした自学自習によって得られることが重要になってきます。
個人や同期で解決できないことは、先輩や他の研究室の方とディスカッションしたりすると有益です。


いかがでしたでしょうか。大学院生活は大変なことも多いですが、学ぶ意欲があれば得られることもそれ以上に大きいです。みなさんの研究活動を応援しています。

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