こんにちは。今回は看護系大学院への進学を考えている方々へ、僕の大学院生として、そして教員としての経験から、少しでも後悔しない大学院選びについて書いていこうと思います。
人それぞれですが、仕事を辞め高い授業料を払って大学院に進学するので、進学してから後悔することがないよう、押さえておくべき最低限のポイントについて書いています。
ネームバリューに惑わされず、自分に適した場所をじっくり考えるようにしましょう!
1.大学院修了後の希望進路を考える
まず最初は、大学院を修了したらどのように自分のキャリアをつくっていくのかを考えましょう。
研究者になりたい、教員になりたい、臨床に戻りたい、起業したい、厚労省や日看協に行きたいなど、様々あると思います。
もちろん、とりあえず大学院に行ってみたいと思う方もいるでしょう。それでも良いと思います。
とにかくこの最初のステップで重要なことは、大学院に行ってどのような自分になりたいか、何を学び何をしてみたいかを妄想することです。
ぼんやりでも、そこを考えておくとどういった大学院に行くべきかがだいたい決まってきます。
最初の段階では明確に定めていなくても、いろいろな可能性を考えておくことで次のステップのモチベーションになりますし、具体的な行動に結びつきやすいと思います。
大学院での生活は、モチベーションがなければ続けることはかなり厳しいですし、修士課程の2年間は研究のタスクであっという間に過ぎていきます。少しでも最初の段階で考えておくことが重要です。
繰り返しますが、明確に決めていなくても大丈夫です。
2.行きたい大学院について調べる
自分のキャリアについて少し妄想したところで、行きたい大学院について調べてみましょう。
ここで重要なポイントは、大学院の制度と修了生の進路です。
研究者や教員になりたい人は、博士号の取得が求められることが多くなってきているので、博士課程(博士後期課程)がある大学院に行くべきです。
博士課程を持つ大学院では、最終的に博士号取得を考えてカリキュラムが組まれていますし、そこを目指した大学院生の仲間も多いので、刺激的な生活を送ることができるでしょう。
表現は良くないですが、修士課程のみの大学院と博士課程をもつ大学院の修士課程では、同じ修士号でも研究の質が違います。また、博士課程への外部からの入学は、たいてい狭き門です。内部からの進学者の人数によっては、もしかしたら募集すらない可能性もあります。
博士号取得を考えている方は、博士課程のある大学院へ行った方が良いので、そうした大学院を選びましょう。
また、修士課程修了後、厚労省や看護協会への就職を考えている方もいるでしょう。大学院で公開されている進路等から、そうした進路に進んだ修了生がいるかどうかも確認しましょう。先輩がいれば話も聞きやすいでしょうし、先輩の働きぶりが良ければもしかしたら就職で有利になるかもしれません。いつごろインターンがあるとか、研究と就活の両立などのノウハウもあるでしょうし、そうした進路の方が代々多ければ、指導教員も配慮してくれます。
3.自分の研究テーマ・関心領域を考える
ここからがいよいよ、出願にあたって重要となってくる部分です。
大学院は基本的に学ぶ場ではありますが、学部と違い自ら学ぶことが要求されますし、最終的に研究として論文を書かなくてはなりません。
そのためには、自分が何に関心があるのか、自分は何を明らかにしたいのかを考えておく必要があります。
それは学術的な必要性よりもむしろ、臨床的な必要性を考えるべきでしょう。
難しく考える必要はなく、働いていて、あるいは実習に行って、文献を読んで、臨床で何が問題になっているのか、自分が関心のあるものをあげてみましょう。
テーマの具体的な深め方は今回書きませんが、ある程度ボンヤリでも構わないので、自分が「知りたい!」「研究したい!」ことをあげてみましょう。
4.指導教員の研究テーマを調べる
自分の関心が決まったら、進学する研究室の分野が決まります。例えば、看護師の離職であれば看護管理分野、精神疾患患者の復職支援であれば精神看護学分野、看護技術に関することであれば基礎看護学分野、がん患者に関することであれば成人看護学分野、などなど。
2で行きたい大学院のシステムをざっくり知り、3で自分の興味がある領域がわかったら、次はその大学院の領域の教室主任(通常主任教授、場合によっては准教授のこともあります)の研究テーマを調べてみましょう。
指導教員のテーマが自分の関心に近ければ近い方が良いです。なぜなら、ほとんどの指導教員は丁寧に指導したいと思っているので、指導教員自身のテーマに近い方が深い指導ができるからです。
ここで注意しておきたいことは、「研究室の領域と指導教員の研究テーマが一致していないことが稀にある」ということです。
例えば、自分の興味が「一般高齢者の医療情報の理解」だったとして、領域としては高齢者が対象なので「老年看護学」のような研究室が該当するかと思いきや、実はそこの研究室では「認知症者のケア」がメインの研究テーマだった、ということはよくあります。「一般高齢者の医療情報の理解」というテーマだと、「看護情報学」や「地域看護学」といった研究室でも研究範囲としてあり得るので、そのあたりの齟齬がないよう事前に調べておく必要があります。
(ただ、多くの場合説明会に行ったり研究室訪問したりすると、教員がテーマを聞いて大学内の適切な研究室に案内してくれたりもしますし、場合によっては他大学の教員を紹介したりもします)
また、テーマが近ければ、指導教員の研究プロジェクトの一部を任せてもらえたりします。この場合の最大のメリットは、研究にかかるお金をプロジェクト資金から出してくれる、ということでしょう(研究にどのくらいお金がかかるのかについては、また別の記事で書こうと思います)。
指導教員のテーマはネットでも調べられますが、僕は説明会や研究室訪問で直接聴きに行き、自分のテーマとの親和性を確認しましたし、実際はじめに行った研究室ではない研究室を紹介され、そちらのほうが指導教員のテーマと自分の関心がマッチしていたのでそちらに進学した経験があります。
5.大学院生の生活について調べる
進みたい大学院、指導を受けたい教室主任がある程度見定められたら、そこの研究室の大学院生の生活について調べてみましょう。活発な研究室では、ホームページに大学院生の活動について紹介している研究室も多いです。
年にどのくらい学会発表しているのか、研究室のプロジェクトにどのくらい関与しているのか、先輩たちはどんなテーマで研究しているのかなどについて、公表されているものはチェックしておきましょう。
また、説明会や研究室訪問を活用して、実際に大学院生の方に研究のことや生活のことなどいろいろ聞いてみると良いでしょう。経済的にはどんな感じなのか、どのくらいアルバイトや社会活動をする余裕があるのか、利用できる奨学金や助成金はどんなものがあるかといった、教員ではあまりわからない部分についても、直接大学院生に話を聞くと良いと思います。
この他にも研究室訪問をしておくと、研究室の雰囲気がある程度把握できます。仲が良さそう、意識が高そう、自由度が高そうなど、同じ大学内でも研究室の雰囲気は全く違います。そうしたものも直接見て感じてみると良いでしょう。
ちなみに、説明会や研究室訪問したからといって必ず受験しなければならないわけではありません。迷っているときは正直に「迷っている」ことを伝えましょう。いろいろなアドバイスを貰えますし、受験前から嘘をつくのはあまり良いことではないですからね。
いかがだったでしょうか。大学院進学を考えている方はぜひ参考にしてみて下さい。
もう少し詳しく知りたい、という方は遠慮なくコメント等で聞いてくださいね。