新型コロナウイルス感染症患者が増加し、対面授業で実施していた座学の講義をオンラインに切り替える大学も増えてくると思います。オンライン授業をする際、動作や音声が不安定になることもあるかと思いますが、その原因、すべてネット回線のせいにしていませんか?僕の周りでも意外とPCや周辺機器についてあまり理解しておらず、不安定な状況をネット回線のせいにしている方が見受けられます。今回は、オンライン授業を開催する際、ネット回線以外で注意すべきいくつかのポイントを解説したいと思います。
(今回の記事では、zoomで実施することを前提にしていますが、基本的にはどのオンライン会議システムでも変わらないと思います)
確認1:回線の実効値を確認する
自宅で契約している回線が、例えば最大1Gbpsとかであっても、少し古くて広いマンションなどでは、中央から各部屋に配分するハブで100Mbpsなどに制限されていることがあります。実際に授業を配信する部屋で、配信するPCを使ってスピードテストをしてみてどの程度のネットワーク環境かを確認しましょう。この時点で300Mbps程度の速度が出ていれば、PowerPointベースでの配信には問題ありません。
自宅の回線契約が1Gbpsとかなのに、実測値が100Mbpsとかなのであれば、上記のように配分しているハブで速度制限されている可能性があります。
確認2:ネットワークはなるべく有線接続、もしくは新しいWi-Fiルーターを使用する
確認1の事項で問題ないのに回線が不安定になる原因の1つとして、ネットワークをWi-Fi接続していることがあります。基本的には有線接続することが望ましいです。比較的新しいルーターを使用していて、かつルーターと同室で配信するときには問題になることはありませんが、違う部屋で配信しているときには注意が必要です。また、接続しているWi-Fiが2.4GHzなのか5GHzなのかも確認しましょう。5GHzのほうが電波は強いですが、壁や家具などの障害物には弱いです。ルーターと同室で配信する、電波状況によって2.4GHzと5GHzを使い分けるなども必要です。
確認3:PCは安価なものを選ばない
ここが一番重要です。安価なPCでは、officeソフトを普通に使う分には問題ありませんが、オンライン会議システムなどPCの負荷が高いソフトを使用するにはそれなりのマシンパワーが必要になります。Intel celeronなどのCPUを使用している非力なPCでは不安定になりやすいので、できればIntel core i5以上のPCを用意しましょう。少し専門的な話になりますが、GPU性能などにも多少依存しますので、やはり安すぎるPCは注意が必要です。また、買い替えが難しい場合は、授業配信に使用するソフト以外をすべて閉じるなど、なるべくPCに負荷をかけないようにすることが大切です。
※ちなみに、在宅ワークでラップトップ(ノート型パソコン)をモニターに接続してデスクトップ型パソコンのように使用している方も少なくないでしょう。その場合は、外部モニターに接続して映像を出力している時点でPCの負荷がかかっている、ということも考慮する必要があります)
※AMD社製Ryzen CPUを使用する際も基本的にIntel社製CPUと同等のスペックのCPUがあるので、それで選べばよいです。
確認4:授業配信中は必ずAC電源に接続する
授業を配信する際は必ずAC電源につないだ状態で行いましょう。PCは電源の供給量に応じて作業を行うCPUやGPUの動きを制御するため、バッテリー駆動状態では十分なパワーを発揮せず、不安定な状況につながります。
確認5:マイクは有線接続のものを使用し、Bluetooth接続は使用しない
これも知らない方が多いのですが、Bluetoothは無線で使用できる便利なものですが、マイク性能は格段に落ちます。音声が悪い、聞き取りにくいといった原因は回線が弱いからというだけではありません。ヘッドセットなどを使用している際、聞く方の音声劣化は気にならないことが多いのですが、自分が話す声はBluetooth接続だと劣化します。これはBluetoothの現在の仕様上、どう頑張っても改善しません。Bluetooth接続の際の音声は、固定電話やカセットテープくらいの音質が限界です。有線接続の場合はCDやDVDレベルの良質な音質を提供できるので、必ず有線接続にしましょう(Bluetooth接続だと、無線で電波を飛ばしている関係上“遅延”も発生し、会話のリズムに支障がでることもあります)。
確認6:マイクを購入する際はマイク性能にも注意を
高いマイクを使っているのに、自宅の周りの音を拾ってしまって支障がでる、という方もいるかもしれません。マイクにもいろいろ種類があって説明はややこしいので詳細は割愛しますが、一番注意してほしいのはマイクの「指向性」です。マイクの周囲の音をまんべんなく拾うものや、特定の方向の音だけを拾うものがあります。安いマイクやヘッドセットは指向性が指定されていないものが多いので、周りの音を拾いやすいです。手ごろな価格帯でマイクが欲しいという方は、置き型のマイクではなくヘッドセットを使用するのが無難です。
確認7:ウェブカメラはHD画質以上のものを選ぶ
ディスカッションなどで顔出しすることもあると思いますが、ウェブカメラはHD画質以上(1080p)のものが望ましいです。画質が上がるとデータ量も多くなるのでPCスペックや回線状況とのバランスが必要ですが、HD画質以下(720p)だと結構見る側は見づらいです。
Amazonなどで数千円で買えるものの、最近はほとんどHD画質以上なのであまり気にする必要はなくなってきましたが、購入する際は確認してから購入することをお勧めします。
確認8:PowerPointでアニメーションは使用しない
アニメーションはデータ量を食います。また、zoomではCPUに負荷(=パソコンに負荷)がかかると自動的にfps(1秒当たりのコマ数)を落とす賢い設定になっています。非力なPCで画面共有してアニメーションを使用しても、実際はカクカクした映像が配信されるので、アニメーションの意味はほとんどなくなっています(むしろ見づらい)。どうしてもアニメーションを使用したい場合は、他のソフトを閉じたりしてCPUの負荷をなるべく抑えるか、高スペックのPCを使用しましょう。
以上が最低限、授業を配信する側が確認しておきたい点です。これを機にPCの買い替えなんかを検討している先生方はぜひ参考にしてください。
※ちなみに、バーチャル背景のことやフルウィンドウのことなどは当たり前すぎるので割愛しています。