2021.5.8 エセ・ニューノーマル・ニッポン
大阪ではすでに、病床に空きがないため新型コロナウイルス感染症を発症した方が入院できないというケースが散見されています。
「医療崩壊間近」などと報道されていますが、医療崩壊の定義はともかく個人的にはすでに医療崩壊であると認識しています。
そんな中、昨日緊急事態宣言の延長が正式に決定し、月末までこの状況が続くことになりました。
報道を見ていると、百貨店や飲食店などの経営者が取材に応じ、「方針を決めてほしい」「経営が持たない、もう限界」「基準が曖昧でわかりにくい。明確に示してほしい」といった声が聞かれました。
国や自治体の要請内容が妥当かどうかは置いておくとして、このような認識が経営者として正しいのかは甚だ疑問です。
「方針を決めてほしい」「明確に示してほしい」という発言には、「あくまで自社・自分にとって明確で、自社・自分が何をしたら良いのか決めてほしい」ということが含意されているように感じます。
国や自治体がメディアの前で公表する内容以外に、何か自分たちの判断に有益な情報を収集しているのでしょうか?各省庁のHPでは、それぞれが所掌する事業者に対しての細かいガイドラインが示されていますし、内閣官房からまとめられた情報も公表されています。
そもそも、こうした事態に自組織の向かうべき方向性を示すことが経営者の役割であるはずですから、「決めてほしい」などといった他力本願では職務放棄に近いように思います。
経営が苦しいことも理解できますが、業界全体の経営地盤が揺らいでいるわけでもありません。小売、飲食、娯楽それぞれの業種で経営を伸ばしている企業もありますし、個人経営は元来こうした不測の事態への耐性が弱いことも経営上至極自然なことです。
自分たちの業種が社会経済や人びとの暮らしの中でどのような位置付けで認識されていて、その中で自組織はどのようにこれから社会と関わっていかなくてはならないのか、このような状況でこそ、これまでのやり方にどのように近づけるのかではなく、本質的な問いから新しい経営・組織運営を行うことが、ほんとうの意味での「ニューノーマル」ではないでしょうか。
(個人的に、百貨店が毎日朝から夜まですべての店舗が開店している理屈がわかりませんし、映画館も入場制限して入館料を上げれば良いのでは、と思います。他にもたくさんありますが…)
コロナ禍になって「ニューノーマル」が叫ばれてきましたが、本質的な考え方を変えられない日本はまさに「エセ・ニューノーマル」だなあ、と見ていて思う今日このごろです。