2022.7.18 理論の濫用・誤用にまみれた看護研究
そもそも、トレーニングを受けていない状況で研究をすること自体、個人的には反対だ。
臨床では、トレーニングを受けていない、準備がきちんとできていない状況ではケアや技術を積極的にさせないのに、なぜ「看護研究」の場合はトレーニング無しでやらせようとするのか。これが理解できないので、トレーニングを受けていない臨床家が臨床で研究することに反対だ。
さらに言えば、現状、大学院の質も非常にバラついているし、研究をきちんとやっていて、かつきちんと(国際誌相当の雑誌に)論文公表している研究者も少ないので、どこぞの大学院で修士を取ったという人が、研究を理解したような風情で臨床家に指導しているのも反対だ。むしろそのことが臨床での研究の質を悪くしているとさえ思う。
実際、表題にあるような、理論を濫用・誤用している研究は非常に多い。というか、学会で目にする理論を用いた研究のほとんどは理論の使い方を間違えている。研究枠組みで理論を用いる際は、その理論が構築された経緯から、理論の適用範囲、理論構築のプロセスや手続き、他の理論との境界線など、非常に幅広い知識が必要になる。理論を用いた研究を発表している研究者に、申し訳ないがその知識の深さを窺い知ることはできない。臨床での疑問を研究的アプローチで洞察してみた、という発表ならば、安易に理論に飛び付かず、臨床的視点で終始論じられた方がよっぽど価値は高い。
上記のように、「知ったかぶり」研究者がそれを惹起しているのかどうかはわからないが、臨床実践と同じく、臨床での看護研究も、きちんとやりたいのであれば、きちんとトレーニングを受けていて、今もなお第一線で研究・論文公表している研究者からトレーニングやスーパーバイズを受けながら実施するべきだろう。
もっとも、個人的にはそうした研究者と共同で研究するのが最適解だとは思っている。