ストレスに対する新しい概念「SOC」とは何か?




久しぶりの投稿になってしまいました。お待ちいただいた皆様、すみません。。

今日は、僕の興味のひとつであるストレスに対する比較的新しい概念である「SOC」という概念を少し説明しようと思います。




疾病生成論と健康生成論

医学をはじめとする多くの医療に関する知識は、基本的に「疾病生成論」という概念を元に発展してきました。

「疾病生成論」とは、原因があって疾病がうまれるという考え方で、「何が病気を作るのか、病気の原因は何か」という視点でさまざまなものを見ていくという概念です。

それに対し、「健康生成論」とは、「何が健康を作るのか」という見方で健康を考えるものです。

両者は似ているようで非なるものです。「疾病生成論」では、どうすれば疾病になるのか、どこからが疾病なのか、という見方で健康を捉えますが、「健康生成論」では、どこからが健康か不健康か、という視点ではありません。「良好な傾向なのか悪い傾向なのか」という視点で健康をみているのです。こうした見方が、精神疾患には非常に親和性がありますが、身体疾患には少し馴染まないかもしれません。ですが、「疾病」ではなく「健康」という視点で考えると、少し見えてくるのではないでしょうか。

健康生成論とSOC

そうした健康生成論の中核をなす概念が「SOC(Sense of Coherence: 首尾一貫感覚)」です。

健康に向かうには、人生や生活そのものに向き合う見方や考え方に関する「核」となる健康要因がある、という考え方です。そうした人生や生活そのものに向き合う見方や考え方が「SOC(首尾一貫感覚)」と呼ばれるものです。

ラザルスらが提唱したストレス- コーピングモデルでは、コーピングに関わるものの見方や考え方がSOCにあたる、と考えて良いでしょう。

SOC(首尾一貫感覚)

SOCとは、世の中に対する向き合い方や姿勢の特徴を表します。主に「把握可能感」「処理可能感」「有意味感」の3つの特徴を持ちます。

把握可能感とは、「世の中(生活・人生)は安定していて先行きも見えると思えること」です。

処理可能感とは、「何かあってもだれか/何かに助けてもらえる、なんとかなると思えること」です。

有意味感とは、「生きていく上で出会う出来事にはすべて意味があって、この先出会うこともチャレンジと思えること」です。

平たく言うと、「これまで/これからの人生には絶望していなく、(いい意味で)なんとかなる、成長できる」という考え方です。一貫して筋の通った感覚、つまり首尾一貫感覚です。

この能力があることで、こころのストレッサーやからだのストレッサーへの対処・処理がうまくでき、健康的にいられる、ということです。

SOCの研究

概念が提唱され、測定する尺度が開発されて以降、爆発的にSOCに関する主にアウトカムを検証する研究が増加しました。

提唱されたモデル通り、生活習慣への頑強なエビデンスが確認され、SOCの有無が健康(健康行動を媒介)に有意に影響することが検証されました。また、精神的なストレスへは、コーピング行動を媒介して、SOCの高い人は有意に精神的健康度が高いことも確認されています。

多くの研究により有益なアウトカムを持つことが確認されているSOCですが、限界もあります。「何がSOCを作りだす・高めるのか?」という疑問には、いまだ理論の域を超えておらず、検証されていません。

ですが、SOCの概念は、健康指導や精神疾患へのアプローチに非常に有益なものだといえます。こうした概念も参考にしつつ、患者と接することも大切なことかもしれません。




いかがでしたでしょうか?今回は難しいモデルや詳細な用語については触れていませんが、SOCという概念について解説してみました。僕としても非常に興味深い概念で、学習中ですので、疑問点等ありましたら一緒に学べたらと思います。

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