家族看護学3 〜家族ストレス対処理論〜

こんにちは(°∇° )

今回は家族看護学シリーズ第3弾、「家族ストレス対処理論」について概観したいと思います。

前回は「家族発達理論」について概観しました(記事はこちらをクリック)。家族発達理論は、個人が成長発達するように、集団である家族も1つの有機体として段階的な発達を遂げていく、という理論でした。

個人のストレス-ストレス対処理論は、ラザルス・フォルクマンの理論が有名ですが、そうした既存の個人のストレス対処理論を集団である家族に拡張したのが今回紹介する「家族ストレス対処理論」です。

ストレス対処理論

ラザルスとフォルクマンが提唱したストレスモデルは、簡単に表すと以下のようになります。

まず、人にストレスを与えると考えられるストレス源となるイベントが発生します。このストレス源はストレス要因、ストレッサーとも呼ばれます。

次に、そのイベントを僕たち個人がどう捉えるのか、という段階になります(評価)。人にとっては些細なことでも「ストレス源だ!」と感じる人もいるでしょうし、「別になんとも思わないよ」と感じる人もいるでしょう。また、そもそもイベントが発生したことに気づかない人もいるかもしれません(認知)。

とても臭いニオイが発生したとして、ニオイに鈍感な人はそもそも臭いにニオイが発生していることに気がつかないので、ストレスを感じるはずはありません。また、ニオイを感じても「臭い」と感じない人はそのニオイに対してストレスを感じません。ニオイを察知して、「臭い」と判断した人だけがストレスを感じることになります。

最後に、そのイベントを評価した後、それに対処する資源を持っているかどうか、でストレス反応が起きるかどうかが決まります。

先ほどのニオイの例でいうと、「臭い!」と感じて、マスクや消臭剤を持っている人は、ストレス源であるニオイから逃れる手段を持っているので、ストレスを感じずに済むでしょう。しかし、そういった資源(手段)を持っていない人は、逃れるすべがないので、ニオイに対してストレスを感じてしまいます。

基本的に、家族ストレス対処理論もこの理論の応用なので、ここまでのことを頭に入れながら以降を読み進めてください。




家族ストレス対処理論その1 ABCX理論

A要因(ストレス源となるイベント)は、B要因(家族危機対応資源)と相互作用し、またC要因(家族が出来事に対してもつ意味づけ)と相互作用して、X(家族危機)が生じるという危機発生の過程をたどります。

先ほど説明した内容とほとんど重複していますが、家族という集団で起きる過程、という違いがあります。

つまり、このモデルで家族をアセスメントする際、ストレス源となるイベントは家族メンバーの誰を中心に発生しているのか、家族が危機を対処するための資源は家族内にあるのか・家族外にあるのか、あるいは無いのか、家族はイベントをどう評価(意味付け)しているのか・イベントの評価(意味付け)は個々のメンバーで異なるのか、という点でアセスメントする必要があります

家族ストレス対処理論② 二重ABCXモデル

このモデルは、先ほどのABCXモデルよりも長期的な視点で家族ストレスを分析するモデルになっています。

このモデルでは、横軸にとった時間の流れは大きく前危機段階後危機段階とに分けられます。

前危機段階はABCXモデルをそのまま踏襲していて、ストレス源、既存の家族資源、ストレス源に対する家族の認知の3つの要因が相互に影響し合いつつ、家族に危機をもたらすとしています。

後危機段階は、この危機状態への対処、つまり適応過程とみなされます。この段階での家族のストレス源は、ストレス源の累積として捉えられ、その対処行動の1要素として既存及び新規の家族資源と、もう1つの要素である当初の認知と付加的なストレス源、新旧の資源、バランス回復に必要な要素などについての認知と相互作用して、全過程の結果である家族適応が起こるという構造になっています。

このモデルは先ほどのモデルをさらに発展させ、既存のABCXモデルのあとの対処に至る過程までフォローすることができます既存の資源にはなかった、新たな資源の有無をアセスメントし、不足があればその点を重点的にアプローチすることで対処が行われ、適応に至ります




家族ストレス対処理論③ 家族ストレス、順応、適応の回復モデル

上記の2つのストレス対処理論を総合して、特に家族の健康問題に対する家族対処を促す看護に役立てるために、家族順応段階と家族適応段階を図式化した「家族ストレス、順応、適応の回復モデル」が開発されました。

(鈴木和子、渡辺裕子:家族看護学 -理論と実践-(第4版).日本看護協会出版会.2012 より引用)

このモデルでは、家族のストレス回復力の経過とそれに影響する要因を経時的に示されており、ストレスに対して家族システムのあり方を変えずに乗り切ろうとする「順応段階」と、システムの変化を伴って対応していく「適応段階」に区別されています。

これまで説明した2つのモデルをベースに構築されており、さらに実際の看護に用いることができるように、より具体的にわかりやすく家族の状況をアセスメントできるようになっています

資源の内容も、家族内にある震源とソーシャルサポートを分けていたり、ストレス源に対する家族の認知だけでなく、家族の能力にも着目している点など、実際に家族へアプローチするときの具体的な視座を与えてくれる内容となっています。




いかがでしたでしょうか?前回の「家族発達理論」では、長期的な視点に基づく家族の現状をアセスメントする理論となっていましたが、こちらはより短期間に起こる家族内の変化をアセスメントする理論となっています。

家族を含めた看護はいまやどの領域においても重要な視点となっています。理論を用いて、実際の看護や、事例の振り返りを行うことで、より家族への看護の質を高めることができるでしょう。今回の理論も、その看護の参考にしてみてはいかがでしょうか。

 

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